「世界の次世代リーダー」に選出されました
「承認」が社員と会社を成長させ、“本物の力”が未来をつくる
仕事を頑張るための原動力は人によって異なるだろうが、共通するものもあるはずだ。そのひとつは「承認」ではないだろうか。清松総合鐵工株式会社は、この「承認」によって売上高を3年で180%UPさせた会社。その背景には何があるのだろうか。
清松総合鐵工の名物は朝礼だ。月に一度の公開朝礼には多くの見学者数が訪れ、その数が社員数を超えることも少なくない。この朝礼で行なわれているのが3つの運動。1つ目が「ええじゃないか運動」。社員が昨日の失敗を発表し、それに対して全員で「ありがとう!」と言う。「君が失敗してくれたから、自分は失敗しなくて済む、失敗をシェアしてくれてありがとう」という意味だ。代表取締役の清松芳夫は語る。「人は怒られているうちは変わらない。怒られたら言い訳を考え、その言い訳で自分を納得させてしまうから、それ以上成長しないんです。だから、ある意味言い訳をさせた時点で経営者の負け。言い訳をさせないためには認めるしかない。人は認めてくれる人の期待に応えようとしますしね」 2つ目は「いいね運動」。明日はこの人がこの人の「いいね」を探すと担当を決める当番制だ。翌日発表された「いいね」に対して、社員みんなで「いいね」と声を揃えると、言った人も言われた人も感動できる。なお「いいね」を探す担当になった人は相手の良いところを探そうとするので、自ずその人のことを知ろうとする。しかも嫌いな人の良いところを探すのは困難であるため、その人を好きにならざるを得ない。社員同士の関係性がより良好になった。3つ目が「ハイタッチ運動」。朝礼開始10分前から会場に清松が笑顔で立ち、集まって来た社員やゲストをハイタッチで迎える。ハイタッチは1番ハードルの低いスキンシップ。だから抵抗なく行える。よって、人と人の距離を縮めるのには抜群の効果を発揮する。そしてこれら3つの運動の共通点こそが「承認」なのだ。
同社が現在の朝礼の形を取り出したのは3年前から。それ以前の朝礼はどこにでもある単調なものだった。しかしその少し前に社屋を建て直し、生産体制を整えたことが清松の意識を変えた。「この立派な社屋にふさわしい会社になりたい」と思うようになったのだ。何かヒントはないかと本を読み漁った清松は、成功者が必ず説くのが「承認」の素晴らしさだと気づいた。そこで掲げたのが「承認だけで成り立つ会社」。同時に業績が思うように上がらないのは、自分が「できない」と決めつけていたからだということにも気づいた。「それ以前の私は、できない社員を叱り飛ばしてボス的リーダーシップで会社を引っ張ろうとしていました。けれどそれでは、社員が自分の仕事に誇りを持てないし、会社に対しての愛着が持てませんよね。当然社員も会社も成長しない。だったら社員がやりたいことを応援し承認した方が会社は伸びると思い、サーバントリーダーシップに切り替えたんです」と清松は振り返る。朝礼から会社のあり方を変えてみたところ、社員の意識が劇的に変わった。それまで清松や上司に指示されたことをやるだけだった社員たちが、主体的に考えて行動するようになったのだ。しかも自分の手が空いたら周りの人を自然と助けるようになった。結果、3年で売上高が180%UP。「売上を35億円にして、みんなでハワイに行こう」と夢を語れる会社になったのだ。
そして今、清松は「これから求められるのは“本物のチカラ”」だと言う。その根拠を問うと「AI革命」と答えが返ってきた。例えば理系のトップは医師だ。だが医師の仕事である症状の「判断」はAIの特技。いずれAI医師が量産される時代が来るかもしれない。文系のトップと言える弁護士にも同じことが言える。依頼した弁護士によって罪の重さが変わる可能性がある現状を考えると、法律や過去の症例から適切に判断し罪の重さなどはAIに任せた方が公平性を期待できるだろう。全ての司法をAIに任せる未来もそう遠くはないのかもしれない。では、将来の成功を目指して一生懸命勉強することはムダな努力なのだろうか。「それは違う」と清松は力強く否定する。「努力はムダではありません。ただ、努力が報われるか?というとそれも否です。なぜなら、報われるという言葉には他者からの評価という意味合いが大きいからです。これからの私たちは、自分の努力に対して自分で価値を与えられるようにならなくてはいけません。そこで求められるのが“本物のチカラ”。自分がやりたいことに対して全勢力を傾け努力をする。世間や親、家族に何を言われようと信念を曲げずに、自分に何が必要かを判断しやり切る。その結果身につけられるのが本物のチカラです」情報や知識さえあればできる仕事はAIに任せればいい。その分、我々人間は本物のチカラでより創造的なチャレンジができる時代がすぐそこまで来ている。お互いの“本物のチカラ”を承認し合えば、きっと未来はより良いものになっていくだろう。